国内のしじみの産地
1.しじみが住める条件
日本で取れるしじみの種類には大きく3種類があります。
ひとつはヤマトシジミで二つ目はセタシジミ、三つ目がマシジミです。この中で最も多いのはヤマトシジミです。このヤマトシジミは汽水域と呼ばれる真水と海水が混じるようなところで生息するということですが、どのような条件が必要なのかを考えてみたいと思います。
やまとしじみが育つのに必要な要素には水底にある砂粒の大きさや水中に含まれる酸素濃度や塩分濃度があります。
しじみというのは、水の動きによって移動したり、砂の中にもぐったりしながら生活しています。泥が多い水底では自由に動くことが難しいので、泥になりにくいように水中の有機物量が少なく、水のきれいな砂が多い水底が適しているのです。
また、しじみは入水管から水を吸い込み、エラを通して酸素を取り入れます。人間の生活排水や工業・農業排水などが原因となって水中の栄養素が増えすぎることでプランクトンやバクテリアなどが増加してヘドロ化し、これが酸素を大量に消費することにより、しじみが必要とする酸素量が得られなくなると死滅してしまうため、酸素濃度を一定以上含んでいることが必要になります。
また、ヤマトシジミは塩分濃度の変化に対応できる生き物です。汽水域と呼ばれる海水と淡水がまじりあう水域は川の河口口や海のすぐ近くにある湖付近などであることが多いので、水位の変動が大きく、その変動によって塩分濃度は変化することになります。このような環境に対応できる生き物は少ないこともヤマトシジミが最も多く取れる種類である理由の一つなのです。
2.国内のしじみの産地
国内におけるしじみの産地は北海道から九州までの汽水湖と河口域になります。
【北海道】網走湖、天塩川、パンケ沼、風蓮湖、石狩川、藻琴湖などがあります。
【東北】津軽半島の西にある十三湖や青森県最大の湖である小川原湖、それ以外にも八郎潟や北上川があげられます。
【関東・甲信越地方】水戸市の南にある涸沼が有名ですが、なかなか市場に出回ることはありません。また、新潟県の阿賀野川河口付近で取れるしじみは一部市場に出回りますが、多くは料理店に直接卸されるものとなっています。【東海地方】愛知県と三重県の県境で太平洋とつながる木曽川の河口付近で取れますが、漁獲量が少ないこともあって希少価値の高い海産物として地元では人気があるようです。
【近畿地方】ここでは琵琶湖や三方湖が産地として挙げられます。
【山陰地方】やまとしじみでもっとも有名なのが、松江市と出雲市に面している宍道湖で、ここには直売所が設けられていて、その日に水揚げされたしじみを直送してもらえます。
【四国地方】四国の皮として有名な四万十川でも大きくふっくらとしたしじみが獲れます。
【九州・沖縄地方】沖縄で獲れるしじみはマングローブしじみなどと呼ばれ、10cm以上になる巨大なものもありますが、食用には向いていないようです。
3.しじみの漁獲量推移
このように日本国内に多くの産地を持つしじみですが、一時期には5万トン前後あった漁獲量が今ではその10分の一程度に減少しています。生活環境などを考えて海水の入り込みが制限されたため、淡水化されてしまって獲れなくなってしまったケースが多いようです。一方でオルニチンの効果が知れ渡るにつれて需要は多くなっており、その需要に対応するために輸入に頼る必要があります。その輸入の多くは中国産で、とくにタイワンシジミはその繁殖力が強いのですが、食用には適さないものもあります。
4.まとめ
一般に多くの方の目にとまるしじみの種類はヤマトシジミなのです。そのヤマトシジミも漁獲量が減少しており、輸入に頼るような場面もあります。しかし、輸入品の中には食用に適さないものあります。日本産品の漁獲量を増やすためには汽水域の自然環境を安定したものにする必要があります。